好きな映画に寅さんシリ－ズがあります。
スト－リ－はワンパタ－ンだしスリルがある訳でも、スカッとする訳でもないのですが、なんとなく昭和の原風景の中、イメ－ジとおりの下町の人々が描かれていて、こころが落ち着くというか、安心するというか、最近の表現ではほっこりする感じの映画です。

「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。」
「たいしたもんだよ蛙のションベン　見上げたもんだよ屋根屋のふんどし　結構毛だらけ、ネコ灰だらけ　尻の周りはクソだらけ」
「やけのやんぱち日焼けの茄子、色が黒くて食いつきたいが、あたしゃ入れ歯で歯が立たないよ」
口上も歯切れがいいです。

先日、柴又を久しぶりに散歩してみました。
柴又駅前にある寅さんの像ができた時分より、人が多く賑わっているように感じました。
さっそく草だんこや焼き鳥、みたらし団子などを食べながら歩いていると、何となく寅さんの映画の世界にちょっとだけ近づけた気がします。

ところで、寅さんの映画に欠かせないのが、マドンナです。
寅さんのシリ－ズの中で、一番のマドンナはよく朝丘ルリ子さんと言われますが、私は大地喜和子さんだと思います。

彼女が芸者役で出演している「寅次郎夕焼け小焼け」は傑作です。
あらすじはこんな感じです。
みすぼらしい老人（宇野重吉）が上野の飲み屋で酔っ払い無銭飲食で警察沙汰になりそうになっているところに寅さん居合わせます。
かわいそうに思った寅さん支払いを肩代わりして家につれて帰って泊めてあげたところ、宿屋と間違えた老人は、感謝するどころかうなぎ屋の飲み食いのつけを払わせたりと朝飯はまだかなど横柄な態度をとりおいちゃんおばちゃんを怒らせてしまいます。
寅さんに説教された老人は、「宿屋じゃなかったのか。どおりで愛想がないと思った」といって画用紙に筆でちょちょっと書いたものを渡し「これを神田の古本屋にもっていけばいくばくかの金になる。頼むよ」と渋る寅さんに頭を下げます。
（上野の飲み屋からここまでのシーンなかなかおもしろいところです。）
神田明神の縁日のついでに神保町の古本屋に出かけ、半信半疑でその紙切れを店の主人（大滝秀治）に見せたところ、その主人「フフフフフ…青観…。人もあろうに青観の名を騙るとは。　いいかね、青観とは日本画の最高峰だよ。それも色紙の類を一切描かないので有名な先生だ。」と一度は一笑に付しますが「・・ん・・まてよ・・・おかしいな・・・」そんなやりとりの後「断っておくけどそんな高い金は出せないよ、　落書きのようなもんなんだから。　いくら？」と真剣な表情で畳み掛けてきます。
寅さん恐縮しながら「それじゃあ電車賃使ってきたことだし…」と1,000円のつもりで指を一本たてます。主人は、10万円のつもり・・・
「そりゃ高い。いくらなんでもそんな高い金出せないよ」と言われ最後に店主から指を7本たてられ「7万円ね。７万円」と言われ、寅さんびっくり仰天してしまいます。（古本屋の主人役の大滝さんと寅さんのやりとり・・何度見ても飽きません。）
実はこの老人日本画壇を代表する池ノ内青観画伯だったというわけです。その後旅に出た寅さんは、播州龍野でその青観画伯と再会することになり、画伯に請われるかたちで、ある宴席で杯を傾けた寅さんは、そこで、「ぼたん」という名の美しい芸者（太地喜和子）に出会うことになり物語が進行していきます。

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Ｈ28年7月 寅さんを観て～マドンナの演技力。その1

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