　レ－シック手術をしてから小さい文字が見づらくなり最近読書から遠ざかっていましたが、久しぶりに夢中になれる本を読みました。

　直木賞受賞作の　下町ロケット　（池井戸潤　小学館）です。
スト－リ－はこんな感じです。
　主人公はかつて研究者としてロケット開発に携わっていた佃航平という人です。彼はロケット打上げに失敗の責任を取って研究者としての道を辞し、親の跡を継いで従業員２００人の小さな会社、大田区にある佃製作所を経営していました。そこに津波のようにおしよせる下請いじめ、資金繰り難 ─ ─ ｡
　そんな中小企業の悲哀を味わいつつも、日々奮闘している佃のもとに、ある日一通の訴状が届きます。相手は、容赦無い法定戦略を駆使し、ライバル企業を叩き潰すことで知られる上場企業です。否応なく法廷闘争に巻き込まれる佃製作所は、社会性信用を失い、会社存亡に危機に立たされます。そんな中、佃製作所が取得していた特許技術が、日本を代表する大企業に大きな衝撃を与えていました。大企業が十分な研究費をかけて出願した特許を主人公の会社は既に取得していたのです。会社は小さくても技術は負けない ─ ─｡
　特許を買取るという大企業と自社の製品でロケットを飛ばしたいと願う主人公。そこにはお金ではなくモノ創り～生きがい～プライドが大企業のエゴとぶつかりあい火花を散らします。そして・・・｡

　この小説の魅力は何の落ち度もない主人公や会社に対して何度も理不尽な事態が生ずることです。そして窮地に立たされる主人公を応援する何人も現れることです。
　その上小説の中に散りはめられている魅力的で真珠のような文章。
　もうたまりません。

　例えば、追加融資を頼みに行った佃に対し取引２０年のメインバンクの支店長は「銀行に技術的なことは判断しろと言われても無理ですよ。融資はそんなもんじゃないんです。ビジネスですよ。」と言い放ちます。このままでは資金繰りが悪化して倒産か・・・と　その後わらにもすがる思いで対面したベンチャ－キャピタルの若い担当者は、逆に「私に言わせれば、御社のような会社に投資しなければ、他のどこにするのか、ということですよ。」とあっさり融資を承諾してもらい窮地を脱します。
　その上たった一人で大企業の弁護士軍団を凌驚する知恵を持った弁理士兼弁護士の活躍により逆に特許侵害で相手の会社から借入金２０億の２倍以上の和解金を勝ち取ることができるようになります。
　そしてその報道があった後、主人公の会社に来たメインバンクの支店長との会話は痛快です。
　「いやあ。社長、新聞見ました。本当に大変でしたね。」バッタのように頭を下げる支店長に対し、「　やはりビジネスの基本はお互いの信用ですから。和解金が支払われた後、御行との取引は解消するつもりで準備しておりますのでそのつもりでいて下さい。」と言うのは経理を担当するメインバンクからの出向者です。メインバンクからの出向者は、銀行のためじゃない。俺だって佃製作所の一員なんだ。という気概が感じられる言葉です。

　そして主人公の佃は担当者にこういい放ちます。
　「自分の都合のいいときだけすり寄ってくるような商売はよしてくれ。いいときも悪いときも信じあっていくのが本当のビジネスなんじゃないのか｡」

　『いいときも悪いときも信じあっていく』この小説の良いところはそのような人達が出身、職業、立場や利害を超えて一丸となって､すこぶる嫌な奴の鼻をあかしていく～読んだ後～作者から元気をもらったような気持ちになれる作品でした。

山田修税理士事務所　　川崎市麻生区万福寺1-12-21 ヴィークコート新百合ヶ丘101号

前へ		次へ

川崎市麻生区新百合ヶ丘 山田修税理士事務所

ブログ

令和6年

令和5年

令和4年

令和3年

令和2年

令和1年

平成31年

平成30年

平成29年

平成28年

平成27年

平成26年

平成25年

平成24年

平成23年

平成22年

平成21年

H23年11月 下町ロケット

川崎市麻生区新百合ヶ丘　山田修税理士事務所

H23年11月　下町ロケット