個人の方へ
法人成り
個人事業主、節税改
事例研究
所得税税法上 もくろみ、慣行及び嗜好として負担した支出(家事関連費)と必要経費の範囲について
専有部分の形状、床面積等が契約時のそれと異なったことによる迷惑料の所得の区分
譲渡所得の計算上、相続により取得した借地権の瑕疵について支払った和解金及び弁護士費用について取得原価算入の可否
土壌汚染の費用の取り扱い
5年ほど前に相続により取得した土地について地質調査を行ったところ土壌汚染が判明した。
詳細は次の通り
土壌汚染調査費 300,000円
対策費 330m3 × 30,000 =9,900,000 円
この土地を譲渡した場合上記の費用はどのように扱われるか
回答
1.土壌汚染の費用が譲渡に際しての条件であれば譲渡所得の計算上譲渡費用に仮に譲渡以前に行った時でも取得費(改良費)となる。
思考過程
前述の譲渡費用の3要件
1.支出の原因が譲渡に着手し、終了するまでの譲渡行為の範囲内にあるもの
2.客観的にみて譲渡をする上で必要な費用であること
または
3. 収入の形成に寄与するものであること
の1及び2を満たしている。
土壌汚染対策法では都道府県知事は、土地の土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると認めるときは、当該土地の所有者等に対し、汚染の除去等の措置をとることを命令できる。
近年は売買契約の際に、売主が土壌汚染対策法の基準に従った措置をとることを条件とする売買契約あり、農地転用決済金と同様客観的にみて譲渡をする上で必要な費用であるといえる。
2.譲渡時の条件でない場合
土壌汚染対策法で、都道府県知事による、汚染の除去等の措置命令により汚染対策をした前提で回答する。
前述のとおり譲渡所得の金額は、その年中のその所得に係る総収入金額からその所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額である。(所得税法33条3項)。
取得費として資産の取得に要した金額とは「資産が他からの購入資産である場合には、買入原価のほか、手数料、登録税等の資産の取得に要した費用を含み」、設備費とは、「資産取得後にその量的改善に要した費用」を改良費とは、「資産取得後にその質的改善に要した費用」となる。
土壌汚染除去費用は、汚染対策(土壌除去、土壌入替、封じ込め、立入制限、盛土、舗装など)土地に存在する欠点欠陥を改め前よりも土地の状態をよくする費用でありいわば土地の相対的価値を上げるため質的改善に要した費用であるといえる。
従って必要経費に算入されたものを除き取得価額に算入すべき支出と言える。
疑問点
資産取得後に生じた紛争解決費用について通達判例ともに資産の維持管理に要した費用として取得費算入を否定しているが画一的に判断内容のものか疑問が残る。
たとえば昭和60年7月30日大阪地裁
納税者が土地所有権に係る紛争解決を委任したことにより支払った弁護士費用は、和解により譲渡した本件土地の譲渡を実現するために必要な費用とは認め難く「資産の譲渡に要した費用」に該当しないとされた事例があるが、取得費という主張をした場合どうだろうか?
原告「本件の場合、土地の事件の相手方は、時効あるいは売買による所有権を主張した点等からすれば、原告の紛争解決は、所有権の完全な回復を目的として出発したのであり、原告にとつては土地の価値が零となるか100パーセントとなるかの紛争であり、単に所有権に対する妨害排除といった内容ではなくなつていつた過程がある。したがつて、弁護士の紛争処理の目的は、所有権の価値の回復に向けられ、そのための加工成形がおこなわれ、成果として、売買、すなわち原告が回復した価値の現実化が実現したわけである。中略
紛争によって失われ、あるいは失われようとしている物質的、あるいは精神的な価値の回復という凝集された点に民事紛争の努力の成果が売買価額に具現されたとみるべきである。」
という主張は、単に土地の周りに柵を作るとか草むしりをするといった単純な維持管理行為でなく資産取得後にその質的改善に要した費用といえるのではないだろうか