個人の方へ
法人成り
個人事業主、節税改
事例研究
所得税税法上 もくろみ、慣行及び嗜好として負担した支出(家事関連費)と必要経費の範囲について
専有部分の形状、床面積等が契約時のそれと異なったことによる迷惑料の所得の区分
譲渡所得の計算上、相続により取得した借地権の瑕疵について支払った和解金及び弁護士費用について取得原価算入の可否
税理士の信用失墜行為
高齢者に対して節税になると称し次の不動産を推定相続人に知らせず購入させた
税理士がいた。
物件所在地 品川区上大崎
土地 宅地 140m2 路線価(自用地)評価額31,600万円
建物 鉄骨造り陸屋根地下1階地上9階 880 m2 令和2年築
用途 店舗 総戸数10 満室賃貸中 表面利回4.25% 実質利回3.3%
固定資産税評価額14,600万円
同不動産は 一棟のビルの持分を小口債権化し、全体の口数を430口そのうち持ち分30口を一口500万円で購入させた。
路線価及び取引事例を基に評価すると推定時価よりもかなり高額であると思慮された 。
問題点1
不動産知識のない高齢者に時価よりも高額だと思われる不動産物件を推定相続人に知らせずに購入させた税理士の行為は信用失墜行為に該当するか
回答
信用失墜行為には該当しない
思考過程
税理士の社会的地位を維持向上させるため税理士法37条で税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。とし税理士の信用失墜行為を禁止している
この場合の信用失墜行為は国家公務員法99条に規定する公務員の信用失墜行為(職務に必ずしも直接関係しない行為や勤務時間外の私的な行為も含まれる)より狭く税理士法第一条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。つまり税務に対する専門家であることを前提に規定されていると思われる。
具体的には次の行為をいう 財務省告示第104号 平成20年3月31日
1 自己脱税
2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止
2 多額かつ反職業倫理的な自己申告漏れ(自己の申告について、申告漏れ所得金額等が多額で、かつ、その内容が税理士としての職業倫理に著しく反するようなものをいう。以下同じ。)
戒告又は2年以内の税理士業務の停止
3 調査妨害(税務代理をする場合において、税務職員の調査を妨げる行為をすることをいう。)
2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止
4 税理士業務を停止されている税理士への名義貸し(自己の名義を他人に使用させることをいう。以下同じ。)
2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止
5 業務け怠(委嘱された税理士業務について正当な理由なく怠ったことを
いう。)
戒告又は1年以内の税理士業務の停止
6 税理士会の会費の滞納(所属する税理士会(県連合会及び支部を含む。)の会費を正当な理由なく長期にわたり滞納することをいう。以下同じ。)
戒告
7 その他反職業倫理的行為(上記以外の行為で、税理士としての職業倫理に反するようなことをしたことをいう。)
税理士法逐条解説には「その他、詐欺・横領等刑法違反等が考えられる」という記載あり
戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止
当事例は上記に当てはまらず、高額物件を推定相続人に知らせず不動産知識のない高齢者に売りつけた行為が詐欺などの刑法違反に該当しなければ税理士法37条が想定する信用失墜行為には該当しない。
参考
(欠格条項)
第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、税理士となる資格を有しない。
一 未成年者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 国税若しくは地方税に関する法令又はこの法律の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しないもの
四 国税若しくは地方税に関する法令若しくはこの法律の規定により罰金の刑に処せられた者で、それぞれその刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなつた日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過しないもの
五 国税又は地方税に関する法令及びこの法律以外の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から3年を経過しないもの
六 懲戒処分により税理士業務を禁止された者で、当該処分を受けた日から3年を経過しないもの
(信用失墜行為の禁止)
第三十七条 税理士は、税理士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
(一般の懲戒)
第四十六条 財務大臣は、この法律若しくは国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したときは、第四十四条に規定する懲戒処分をすることができる。
(懲戒の種類)
第四十四条 税理士に対する懲戒処分は、次の三種とする。
一 戒告・・・本人の将来を戒める旨の申渡しをする処分であり、懲戒処分としては最も軽いもの。
戒告処分を受けた者は、引き続き税理士業務を行うことができる。
二 2年以内の税理士業務の停止・・・税理士業務を行うことを一定期間やめることを命ずる処分。停止期間中は税理士業務を行うことができないが、税理士登録は抹消されない
三 税理士業務の禁止・・・税理士業務を行ってはならない旨を命ずる処分で、税理士に対する懲戒処分のうち最も重い処分。
税理士業務の禁止処分を受けた者は、処分を受けた日から3年を経過する日まで税理士となる資格を有しないこととなり、税理士登録を抹消されることとなる。
主たる住居でないマンションの譲渡につき、居住用財産の特別控除を適用して所得金額1,500万円を不正に圧縮した場合の業務停止3か月の事例あり
大阪地方裁判所平成27年(行ウ)第513号税理士懲戒処分取消請求事件
第五十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 税理士となる資格を有しない者で、日本税理士会連合会に対し、その資格につき虚偽の申請をして税理士名簿に登録させたもの
二 第三十七条の二(非税理士に対する名義貸しの禁止)の規定に違反した者
三 第三十八条(秘密を守る義務)又は(税理士の使用人等の秘密を守る義務)規定に違反した者
四 第五十二条(税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。)の規定に違反した者
第六十条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第四十二条(業務の制限)の規定に違反した者
二 第四十三条(業務の停止)の規定に違反した者
三 第四十五条(脱税相談等をした場合の懲戒)若しくは第四十六条(一般の懲戒)又は第四十八条の二十第一項(違法行為等についての処分)の規定による税理士業務の停止の処分を受けた場合において、その処分に違反して税理士業務を行つた者