法人の方へ
税務士選びのポイント
事例研究
不合理な区分で土地・建物を購入した時の消費税、法人税の取扱い
区分所有建物を退職金として現物支給した場合の時価の算定と過大退職金の判定及び退職金の経理処理について
代表者の自宅を社宅として利用するため同族法人に売却しリフォーム後しばらくして買戻す場合の建物の価額
築25年の木造居宅120㎡をAが経営するB社に建物のみ固定資産税評価額300万円で売却した。
その後Aは本建物のリフォームを次のように行いその後社宅として居住した。
外壁塗装100万円
壁紙の張替え30万円
水回り4点入替 キッチン 風呂、トイレ、洗面台合計150万円
部屋の間取りの変更100万円
部屋の増築300万円
その他20万円 合計700万円。
しばらく住んだのち同建物を買戻そうと考えているがいくらで買戻せばよいか
回答
固定資産評価額に増改築を行った金額の未償却残高の7割を加算した金額
具体例
外壁塗装100万円、壁紙の張替え30万円及びその他4万円計134万円は修繕費として処理
居住後3年で譲渡した場合
水回りの入替 150万
間取りの変更100万
増築 300万
その他 16万 (資本的支出と修繕費で按分)計566万を資本的支出として処理
固定資産税評価額300+{566―(566×0.9×0.25×3年)}×0.7=428.765万
資本的支出額が建物の再取得価額注2112万の半分以下のため見積耐用年数を選択
木造モルタル20年 20×0.2=4年・・・0.25
ちなみに再取得価額は、新品として取得する場合の取得価額(新価、再調達価額)をいう。
注 令和3年建築価額 176,000円/㎡×120㎡
思考過程
法人の有する建物の取引価額は法人税法第22条第4項により一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に照らし通常の取引がされた場合に成立する価額となる。
具体的な評価方法として平成24年8月16日裁決では法人税法には 法人所有の建物等の譲渡又は譲受け時の建物の適正な価額を評価する具体的な規定がないため 建物の客観的交換価値を求めるには建物等の現況を考慮し、合理的かつ適切な評価方法によって求めるのが相当であるとした。
具体例として
①建物等の再調達原価を基礎とした原価法
②建物等の取引実例を基礎とした取引事例比較法
③賃料等の建物等が将来生み出すであろうと期待される収益還元法の3つがるとした。
②建物等の取引事例及び ③収益還元法についてついては当該物件は 建物のみの取引であり同種の取引事例は見当たらないと思われる。
①について検討すると 当該建物は法定耐用年数を経過しており建物等の再調達原価を基礎とした原価法をそのまま適用すると1円となってしまいリフォーム代金が価額に反映されない。
法人税基本通達逐条解説 9-1-19では
「時価算定の基礎となる再取得価額は期末において新品として取得する場合の取得価額ということであるが仮に当該資産を取得してからさして年数が経過しておらずしかもその間当該資産の市場価額にさして著しい変動がないというような場合には当該資産の法定未償却残高をそのまま時価として用いるということに差し支えないと思われる。」としている。
そこで建物の取得価額に資本的支出の金額を加算し見積耐用年数を使用して償却計算を行なったところ建物の価額が約216万円となった。
(300+566)-{(300+566)×0.25×3}=216.5万
これを法人の建物の時価と考えると建物の固定資産税評価額を下回り 700万円の投下額が反映されない結果となる。
家屋の評価、固定資産税評価額の合理性については 贈与を受けた建物の価額について固定資産税評価額に0.5を乗じた額でよいかを争った平成26年10月31日札幌地裁判決がある。
裁判所は固定資産評価基準で木造家屋について最終残価率を一律20%としているのは木造家屋の再建築価額全体に占める主要構造割合が概ね20%に基づくもので合理性が認められるとし
家屋の固定資産税評価額はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することができない特別の事情がない限り 家屋の価額について固定資産税評価額に倍率1.0を乗じて計算した金額によって評価することが合理的であるとしている。
また、ウェブサイトでは木造住宅の場合 銀行では築20年で担保価値ゼロと査定する旨の記載があったり平成23年4月の新聞広告には中古住宅の価格をマイナス評価する旨の記載があるがこれらの事情のみを持って木造部分の交換価値が 固定資産税評価額よりも低いものであるとは認めがたいとした。
先ほどの評価額は固定資産税評価額の50%以上の価額になるが
同法で評価することについて適正な価格が算出できないと思われるため
財産評価基本通達89 家屋の評価 〔参考2〕
増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価を参考に算定を行った
家屋の固定資産税評価額 +( 増改築の費用 -償却費)×0.7
結論
建物の時価は譲渡又は譲受時の建物の現況を考慮し合理的かつ適切な評価方法により求めるべきである。
つまり、この事例の場合、建物の取壊しを前提とした譲渡なのかそうでないのか
リフォームの目的は何か、リフォームをしてどのくらいの年数が経過しているかを考慮して算定する必要がある。
具体例では3年経過後としたが法定耐用年数が経過した木造家屋の場合
リフォーム費用が再取得価格の50%を上回らない限り結果として短期間でリフォーム代が費用化できることになる。