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事例研究
不合理な区分で土地・建物を購入した時の消費税、法人税の取扱い
区分所有建物を退職金として現物支給した場合の時価の算定と過大退職金の判定及び退職金の経理処理について
不合理な区分で土地・建物を購入した時の消費税、法人税の取扱い
平成25年12月7日
株式会社E商事は不動産投資を目的として都内にある下記の物件を購入した。
土地 600坪
建物 地上5階 鉄筋コンクリート造 延床面積600坪 築20年
総戸数40 1F店舗 2F~5F共同住宅
売買価額 土地 410,000千円
建物 10,000千円
消費税等 500千円 計420,500千円
ちなみに上記土地及び建物の固定資産税評価額は
土地 170,000千円
建物 130,000千円 である
検討事項
不合理な区分で土地建物を取得した時の消費税、法人税の取扱いはどのようにすべきか。またE商事は別紙契約書のとおり不動産管理会社に管理委託契約を締結したが、税務上の問題点はないか。
結 論
消費税の取扱い・・・E商事が合理的な区分を主張して契約書の合意と異なる仕入税額控除をすることは認められない。
法人税の取扱い・・・原則として当事者が合意した金額によるがその区分が不合理である場合には売買実例や建築費を基に土地や建物の譲渡価額を算出する直接法、土地又は建物の一方の価額を算出し代金総額から差し引き計算する差引法、何らかの方法により土地建物の価額比により代金総額をあん分する按分法のうち法人が合理的な算定方法として選択した方法により算出した金額で区分する。
例えば固定資産税評価額の比により按分した以下の金額
土地 170,000
420,000 × 170,000+130,000 = 238,000千円
建物 420,000 - 土地 + 消費税500 = 182,500千円 など
思考過程
消費税の取扱い・・・E商事が合理的な区分を主張して契約書の合意と異なる仕入税額控除をすることは認められない。
法人税の取扱い・・・原則として当事者が合意した金額によるがその区分が不合理である場合には売買実例や建築費を基に土地や建物の譲渡価額を算出する直接法、土地又は建物の一方の価額を算出し代金総額から差し引き計算する差引法、何らかの方法により土地建物の価額比により代金総額をあん分する按分法のうち法人が合理的な算定方法として選択した方法により算出した金額で区分する。
例えば固定資産税評価額の比により按分した以下の金額
土地 170,000
420,000 × 170,000+130,000 = 238,000千円
建物 420,000 - 土地 + 消費税500 = 182,500千円 など
●消費税法における扱い
消費税法施行令第45条第3項(課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準の額)は、事業者が課税資産と非課税資産とを同一の者に対して同時に譲渡した場合において、これらの資産の譲渡の対価の額が課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときは、当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、これらの資産の譲渡の時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とするとしている。また、消費税法基本通達10-1-5及び11-4-2は、譲渡側と譲受側のそれぞれの扱いとして、土地重課に係る区分の扱いにより土地及び建物の対価の額を区分しているときは、その区分したところによる旨定めている。
●建物と土地等とを同一の者に対し同時に譲渡した場合の取扱い
消費税法基本通達 10-1-5
事業者が令第45条第3項(一括譲渡した場合の課税標準の計算の方法)に規定する課税資産の譲渡等に係る資産(以下「課税資産」という。)と同項に規定する課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係る資産(以下「非課税資産」という。)とを同一の者に対し同時に譲渡した場合には、それぞれの資産の譲渡の対価について合理的に区分しなければならないのであるが、建物、土地等を同一の者に対し同時に譲渡した場合において、それぞれの対価につき、所得税又は法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算における取扱いにより区分しているときは、その区分したところによる。
(注)
合理的に区分されていない場合には、同項の規定により、それぞれの譲渡に係る通常の取引価額を基礎として区分することに留意する。
●建物と土地等とを同一の者から同時に譲り受けた場合の取扱い
消費税法基本通達 11-4-2
事業者が、課税資産と非課税遺産とを同一の者から同時に譲り受けた場合には、当該譲受けに係る支払対価の額を課税仕入れに係る支払対価の額とその他の仕入れに係る支払対価の額とに合理的に区分しなければならないのであるが、建物と土地等を同一の者から同時に譲り受けた場合において、その支払対価の額につき、所得税又は法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算における取扱いにより区分しているときは、その区分したところによる。
消費税法基本通達 10-1-5の(注)では合理的に区分されていない時は、通常の取扱価額を基礎として区分するとしている。
土地建物の価額は合理的な区分がされているか検討する。
土地の路線価価額からの時価の算定
100,000×600坪×3.3㎡=198,000千円÷0.8=247,500千円・・・①
建物の価額
420,000-①=172,500千円+500千円(消費税)=173,000千円
建物の再建築価額
260,916千円(減価償却後) ・・・②
②+500千円(消費税)=261,416千円 ・・・③
土地の価額
420,000-②=159,084千円
固定資産税の評価比では土地建物の比が17:13
土地差引法では 29:21
建物差引法では 31:19
となりその平均は8:5である。49:1の実際の取引額との比と大きく開差があり合理的な区分だと言えない。
しかし、消費税は累積課税を防ぐために売上に対する税額から仕入に係る税額を控除する前段階控除をその本質としており消費税法30条 においてはっきり「事業者が課税仕入れについては・・課税標準に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する。」と規定している。
裁決事例においても請求人は、土地とともに取得した建物の取得価額は、時価により合理的に算定すべきであるから、売買契約書に記載された建物の価額によ らず、売買代金総額を土地及び建物の各固定資産税評価額の価額比であん分して算定した価額によるべきであり、また、本件建物の課税仕入れに係る支払対価の額も、消費税法施行令第45条第3項及び租税特別措置法関係通達62の3(2)-3の規定等の趣旨に照らし、上記の方法により合理的に算定すべきである旨主張する。
しかしながら、本件の売買契約は、請求人及びA社が、契約当事者として本件契約書に記載された内容で合意し、本件契約の締結に至ったものと認められ、両者の間に、同族会社であるなど特殊な利害関係あるいは租税回避の意思や脱税目的等の下に故意に実体と異なる内容を契約書に表示したなどの事情は認められず、また、本件契約書に記載された本件建物の価額は、売主が不動産売買の仲介業者に本件土地建物の売却価額の査定を依頼し、その報告書を参考に決定したものであって、当審判所の調査によっても特段不合理なものとは認められないから、本件建物の減価償却に係る取得価額は、本件契約書に記載された本件建物の価額を基に算定するのが相当である。
また、本件建物の課税仕入れに係る支払対価の額も、本件契約書に記載された本件建物の価額が、契約当事者双方の契約意思を表示するものであり、本件契約書に実体と異なる内容を表示したなどの特段の事情もなく、また、その価額に特段不合理な点が認められないから、本件契約書に記載された本件建物の価額を基に算定するのが相当である。
裁決年月日 H20-05-08
裁決事例集 J75-5-42
として納税者側の訴えを棄却している。従って通達では通常の取引価額に区分するとしていながらも売り手が不合理区分を是正した時(された時)以外には契約書で合意した金額以外での仕入税額控除は認められないと考えるべきである。
●法人税の取扱い
法人税法には累積課税控除の規定はなく著しく不合理な土地建物の区分は消費税と別に合理的に区分して減価償却を行っても良いものと考える。
E商事の管理契約について
契約書にはどこにも居住の用に供する旨の貸付であるとの記載がない。転貸先は居住の用に供していたとしても「契約」上そのような記載のない契約は非課税取引とならない。